デットファイナンスの仕組みと活用方法

更新日 : 2024年11月08日
デットファイナンスの仕組みと活用方法

「資金調達をしたいけど、株式発行は避けたい」そんな悩みをお持ちではありませんか? デットファイナンスは、企業が借入によって資金調達を行う方法で、株式発行のように経営権を譲渡する必要がありません。 本記事では、デットファイナンスの仕組みや特徴を解説します。

デットファイナンスとは?

デットファイナンスとは、企業や個人事業主が資金を調達する際に、債務(デット)を負う形で資金を得る手法を指します。別名、借入金融とも呼ばれており、金融機関からの融資やローン、社債の発行といった手段を通じて資金を調達し、その後借りた金額に対して利息を付けて返済していく仕組みです。

これは、エクイティファイナンス(株式発行や投資家からの出資)とは異なり、債務者が返済義務を負う点が特徴です。

関連記事:エクイティファイナンスとは?種類とメリット、資金調達時のポイントや注意点も解説

デットファイナンスの特徴

デットファイナンスを用いた資金調達には、4つの重要な特徴があります。

1.返済の義務付け デットファイナンスは借入を伴うため、借入期間内に元金と利息の返済が義務付けられます。

2.利息の発生 デットファイナンスでは、借入額に対して利息が発生します。利息は、借入期間や金利によって変動します。

3.債権者の強い権利 デットファイナンスにおいて、債権者は借入企業に対して返済を求める権利を有します。借入企業が返済不能に陥った場合、債権者は担保権を行使することが可能です。

4.低コストな資金調達 デットファイナンスは、エクイティファイナンスに比べて、一般的に資金調達コストが低い傾向にあります。これは、利息がエクイティファイナンスの配当よりも低いことが要因です。

デットファイナンスの種類

主なデットファイナンスの種類としては、公的融資、銀行融資、社債発行、債務保証、ファクタリング、ノンリコースローン、リース、信託銀行融資などがあります。これらの手段は、企業の規模や業種、資金調達の目的によって適切なものが異なってきます。以下では、代表的なデットファイナンスの種類について詳しく説明します。

公的融資

事業を新たに開始する方や、創業間もない方の資金調達手段として、「新創業融資制度」をご検討されている方も多いのではないでしょうか。本制度は、2024年3月に廃止され、代わりに「新規開業資金」が拡充されました。

「新規開業資金」は、スタートアップや中小企業の起業家に対して提供される資金で、以下のような特徴があります。

  • 融資枠の拡充: 起業資金としての融資額が従来よりも大幅に増額されています。これにより、特に初期投資が必要なビジネスでも、起業家が資金不足に陥るリスクを軽減します。
  • 低金利・長期返済: 資金の返済条件が柔軟になっており、低金利で長期にわたって返済が可能となっています。これにより、初期のキャッシュフローを安定させやすくなっています。
  • スタートアップ特化支援: 特に技術革新や新たなサービス分野におけるスタートアップに対する支援が強化されています。従来の事業と異なる分野に挑戦する起業家にも手厚いサポートが期待されます。

銀行融資

事業資金の調達において、民間金融機関からの融資は重要な選択肢の一つです。融資には、大きく分けて2つの種類があります。一つは信用保証協会の保証を受けずに銀行と直接契約を結ぶプロパー融資、もう一つは事業資金の利用を目的としたビジネスローンです。

プロパー融資

プロパー融資は、都市銀行、地方銀行、インターネット銀行などの金融機関から資金を調達する方法です。審査では、企業の財務状況や経営状態などを総合的に評価し、融資の可否、金利、返済期間などが決定されます。

企業の財務状況は、資本金や自己資本比率などの数値で評価される「定量評価」と、市場動向や経営状態、営業基盤、競合状態などの数字では表現しにくい「定性評価」によって構成されます。そのため、プロパー融資の審査には、事業計画書や決算書など、多くの資料が必要となります。

ビジネスローン

ビジネスローンは、開業資金、運転資金、設備資金など、事業に必要な資金の調達に特化したローン商品です。金融機関だけでなく、信販会社や消費者金融などもビジネスローンを提供しています。プロパー融資に比べて金利が高い傾向がありますが、迅速な融資が可能な場合が多い点が特徴です。中には、無担保で借入可能な商品や、申込から融資実行までの期間が短い商品も存在します。

関連記事:ビジネスカードローンとは?最適な活用法と選び方

融資を受ける際には、貸出先の金融機関や企業の財務状況、担保や保証の有無などによって条件が異なるため、事前にしっかりと確認することが重要です。

社債

事業会社が資金調達手段として活用する代表的な方法の一つに、普通社債(公募債)と呼ばれるデットファイナンスがあります。これは、事前に発行金額、償還期限、利息率などを決定した上で、一般投資家に向けて債券を発行し、資金を調達する仕組みです。

普通社債は、満期時に一括で償還されるケースが一般的です。そのため、融資と比較して資金繰りの柔軟性が高く、計画的な資金調達を実現しやすい点が魅力です。

ただし、社債発行には、有価証券報告書や有価証券通知書の提出など、必要な手続きが複数存在します。

私募債

私募債は、特定の投資家のみを対象に資金調達を行う債券です。

私募債は、公募のように募集要項を公開する必要がないため、手続きが簡素化され、中小企業にとって資金調達のハードルが低くなります。そのため、中小企業では、金融機関や信用保証協会などが償還を保証する私募債が一般的です。これらの私募債は、それぞれ「銀行保証付(銀行引受)私募債」「信用保証協会保証付私募債」と呼ばれています。

金融機関や信用保証協会から償還の保証を受けるには、企業は一定の財務基準を満たす必要があります。そのため、これらの私募債を発行できるのは、比較的財務状況が安定している優良企業に限られます。保証を得られることは、企業の信用度向上やPR効果に繋がります。

さらに、私募債では、財務状況が一定水準以上であれば、毎月の返済によって資金が減らない形式での資金調達(一括償還)も可能です。

コマーシャルペーパー

コマーシャルペーパー(CP)とは、企業が短期的な資金調達を目的として発行する無担保の約束手形です。発行できるのは、高い信用力を持つ財務状態の良好な企業に限られます。発行額は、原則として1億円以上です。

発行されたコマーシャルペーパーは、証券会社や金融機関が引き受け、投資家に販売される仕組みになっています。これは、社債と類似した仕組みですが、社債との違いは償還期間です。社債の償還期間は1年以上である一方、コマーシャルペーパーの償還期間は1年未満、多くは1~3カ月以内です。発行企業の信用力や財務状況によって、コマーシャルペーパーの金利は異なります。

シンジケートローン

複数の金融機関が共同で融資を行う、シンジケートローンは、資金調達方法の一つです。複数の金融機関から構成されるグループ(シンジケート団)が、単一の融資契約書に基づいて、同一の条件で融資を提供します。各金融機関は、個別に融資を行います。

シンジケートローンの仕組みは、社債の発行方法と類似しています。アレンジャー(幹事金融機関)が、融資に参加する金融機関を募ります。ただし、シンジケートローンは、金融機関からの借入であり、社債とは異なる資金調達方法です。

借入条件や返済スケジュールの設定を柔軟に行える点は、シンジケートローンの大きなメリットです。また、アレンジャーのサポートにより、事務的な負担を軽減できるのも利点です。一方で、金利に加えて、アレンジメントフィーやエージェントフィーなどの手数料が発生する点には注意が必要です。

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは、資金を求める企業と、投資を通じて収益を期待する個人投資家を繋ぐサービスです。これは、クラウドファンディングの一種であり、融資型のクラウドファンディングとも呼ばれています。

ソーシャルレンディングサービスを提供する会社は、インターネット上でファンドの募集を行い、個人投資家から資金を集めます。その後、ファンド業者を通じて、集めた資金を企業に貸し付けます。個人投資家にとって、このサービスは1万円程度から利用できる場合が多く、少額の資金で資産運用を始められるというメリットがあります。

企業にとって、ソーシャルレンディングは、従来の融資と比較して資金調達までの期間が短い点が魅力です。ただし、ソーシャルレンディングでの資金調達には、銀行からの融資よりも高い金利が設定される傾向がある点に注意が必要です。

まとめ

デットファイナンスは、企業が資金調達を行うための有効な手段の一つです。銀行融資や社債などの様々な方法を活用することで、経営の安定化や事業拡大を図ることができます。

しかし、返済義務や利息が発生するため、資金計画をしっかりと立て、返済能力を見極めることが重要です。デットファイナンスを理解し、適切な資金調達方法を選択することで、企業は成長と発展を遂げることが可能となります。

FUEL 編集部 TAKAHASHI

ターゲットメディア株式会社(2018年入社)運用ディレクター。
広告・マーケティング業界に特化したBtoBメディアの運用責任者を経て
育児のため一時休職。現在は、中小企業向けの情報サイト「FUEL」の運用に従事。