【中小企業向け】テレワークのセキュリティを強化する5つの方法

新型コロナウイルスの影響を機に、多くの中小企業がテレワークを導入しました。テレワークは、生産性の向上や従業員のワークライフバランス改善といった多くのメリットをもたらしました。しかし従来のオフィス環境では想定していなかったセキュリティ課題が浮き彫りになり、セキュリティリスクも高まっています。本記事では、特に中小企業が取り組みやすい「5つのセキュリティ対策」を分かりやすく解説します。
テレワークで高まるセキュリティリスク
テレワークの導入は働き方に柔軟性をもたらす一方で、新しいセキュリティリスクを伴います。以下は特に注意が必要な主なリスクです。
情報漏洩
テレワーク環境では、機密情報を扱う際の注意が疎かになりがちです。たとえば、家族や同居人が業務デバイスにアクセスしてしまうことや、誤って機密ファイルを外部のクラウドサービスに保存してしまうことがあります。また、オンライン会議ツールの設定ミスによる情報漏洩もリスクの一つです。
不正アクセス
自宅や公共のWi-Fiを利用することで、悪意のある第三者がネットワーク通信を盗聴したり、不正アクセスを試みたりするリスクが高まります。特に、VPNを利用しない場合や、企業が認証プロセスを厳格化していない場合、攻撃者が従業員のデバイスを足がかりに企業内ネットワークに侵入する可能性があります。
デバイスの盗難・紛失
従業員が外出先や公共交通機関で業務用のデバイスを持ち運ぶ際、紛失や盗難に遭う可能性があります。これにより、機密データが流出する危険性が高まり、盗難されたデバイスに強力なセキュリティ対策が施されていなければ、攻撃者が容易にアクセスすることも考えられます。
セキュリティを強化する5つの方法
テレワーク環境でのセキュリティ課題に対応するには、実践的な対策を講じることが重要です。ここでは中小企業が導入しやすい5つの方法を紹介します。
① VPN(仮想プライベートネットワーク)の導入
VPNを利用することで、従業員が公共Wi-Fiや自宅ネットワークから安全に企業ネットワークに接続できます。VPNはデータを暗号化して送受信するため、通信内容が第三者に盗み見られるリスクを大幅に軽減します。
VPNを選ぶ際には、以下の点に注意が必要です。
- 同時接続数に対応できるか:従業員数に見合ったライセンスを選択。
- 通信速度の安定性:作業効率に影響しないサービスを選ぶ。
- コスト:中小企業向けに手頃なプランを提供するサービスが増えており、月額数千円から利用可能です。無料VPNはセキュリティリスクが高いため避けましょう。
② 強力なパスワード管理と二要素認証の実施
パスワードの設定基準を明確にし、従業員に徹底させることが重要です。たとえば以下のようなルールを設けましょう。
- 12文字以上で大文字・小文字・数字・記号を含む
- 定期的な変更を推奨(3か月ごとなど)
- 同一パスワードの使い回しを禁止
パスワードに加えてスマートフォンや認証アプリを用いる二要素認証(2FA)は、不正ログインのリスクを大幅に減らします。仮にパスワードが漏洩しても、2FAにより不正アクセスを防ぐことが可能です。
③ セキュリティソフトの導入と更新の徹底
中小企業向けに特化したコスト効率の良いセキュリティソフトが多数存在します。たとえば、ESETやTrend Microなどは、簡単な操作性と強力な保護機能を兼ね備えています。しかしセキュリティソフトやOSの更新を怠ると、既知の脆弱性を悪用されるリスクが高まります。更新作業を自動化する設定を利用し、常に最新の状態を維持する必要があります。
④ 社員向けセキュリティ教育と意識向上
従業員が攻撃の手口を理解していない場合、企業全体のセキュリティが弱まります。定期的に実際の被害事例を共有し、怪しいメールやリンクを開かない習慣をつけることが大切です。社員の意識向上を図るために簡単なオンライン研修やセミナーを実施し、疑似的な攻撃テストを行うことで、実践的なスキルを身につけてもらうのも効果的です。
⑤ BYOD(私物端末利用)対策と端末管理
私物端末を業務に使用する場合、セキュリティポリシーを明確に定めましょう。具体的には以下を推奨します。
- 業務データは企業が提供するアプリ内に限定して保存
- 個人用デバイスに必ずセキュリティソフトをインストール
デバイス紛失時にデータを遠隔で消去できる機能や、MDMツールを利用してデバイス全体を管理することで、情報漏洩のリスクを低減できます。
実践にあたっての注意点
5つの方法を実践する前にいくつかの注意が必要です。
コストと効果のバランスを考慮
セキュリティ対策を強化するためには、一定のコストがかかりますが、過剰な投資を避けることも重要です。中小企業の場合、限られた予算の中で最適な対策を選ぶ必要があります。以下の点を考慮して、コストと効果のバランスを取ることが求められます。
1,優先順位をつける
最もリスクが高い部分から優先的に対策を実施する。例えば、従業員がリモートワーク中に不正アクセスを受けるリスクが大きい場合、VPNや二要素認証を優先的に導入します。最初に高リスクな部分から手を付けることで、最小限のコストで最大の効果を得ることができます。
2,無料または低コストのツールを活用する
初期投資を抑えるためには、無料や低コストのセキュリティツールを活用するのも一つの方法です。例えば、無料のセキュリティソフトやオープンソースのVPNを使用することで、初期費用を大幅に削減できます。ただし、無料ツールはサポートや機能に限界があることを考慮し、必要に応じて有料プランへの移行を検討することも大切です。
3,長期的なコスト効果を意識する
セキュリティ対策は一度きりの費用ではなく、継続的な投資が必要です。導入後の運用・更新コストも考慮した上で、最もコストパフォーマンスの良い方法を選ぶことが重要です。
外部専門家やサービスの活用も検討
セキュリティ対策に関する専門的な知識を持つ外部の専門家やサービスを活用することも有効な選択肢です。
1,セキュリティコンサルタントの活用
セキュリティコンサルタントを活用すれば、企業の現状に最適なセキュリティ対策を提案してもらえます。また、リスク評価を行い、具体的な改善策を示してくれるため、効率的な対策ができます。
2,外部セキュリティサービスの利用
企業が内部で完璧なセキュリティ体制を構築するのは難しいため、外部のセキュリティサービス(SOCサービスやマネージドセキュリティサービス)を利用するのも一つの方法です。これにより、24時間体制で監視や対策を実施してもらうことができ、攻撃への即時対応が可能になります。
3,サイバー保険の検討
万が一のサイバー攻撃による損害をカバーするために、サイバー保険の加入も検討しておくことで、被害発生時の経済的な負担を軽減することができます。
まとめ
テレワークの普及は中小企業に新たな働き方の可能性を提供する一方で、セキュリティ面での課題も生じています。本記事では、セキュリティ対策を怠るリスクと、それを軽減するための実践的な方法について解説しました。自社の状況やリソースに合わせて参考にし、実践に役立たせてください。
FUEL 編集部 TAKAHASHI
ターゲットメディア株式会社(2018年入社)運用ディレクター。
広告・マーケティング業界に特化したBtoBメディアの運用責任者を経て
育児のため一時休職。現在は、中小企業向けの情報サイト「FUEL」の運用に従事。